辰砂花器
平成 11 年 6 月、第 29 回全陶展 初入選 <東京都美術館展示>
「辰砂」の赤にこだわり、本腰を入れて釉薬の勉強をするようになる。前年、平成 10 年 12 月に約 90 年続いた小野寺商会を自主廃業し、「誰にも会いたくない」、「顔も見られたくない」の心境で、コツコツと毎日ただひたすらに陶芸に打ち込み、縋るような思いで制作した辰砂花器である。
地元の力強い粘土と下部のふっくらした造形が、温かく私を包み、辰砂釉の落ち着いた赤が、私を励ましてくれた。「駄目でもともと」の気持ちで、初めての中央への挑戦だった。入選の知らせに驚き、喜び、妻と二人で上野に向かった日のことは、昨日のことのように思われます。「一生に一度でよいから、東京都美術館に展示されるような作品を作りたい」という夢がかなって妻と二人で乾杯した喜びは、忘れられません。
この美術展に出品してからは、私にとってこの辰砂の赤は、縁起の良い、敗者復活の色となり「辰砂の赤を極めよう」と強い気持ちを抱かせ、現在も「辰砂の小野寺重一」を目標に作陶に励んでいます。
この投稿へのコメント